電子書籍はスマホやタブレットの普及に伴い一般的になりました。
本記事では、「紙の書籍を電子書籍としても販売したい」そんな企業の方が
まず検討すべきポイントを解説します。
目次
POINT01
誰に向けて販売するか
既存 or 新規
TARGET
まず、電子書籍でターゲットとする読者層を検討しましょう。読者層によって、おすすめの販売方法が異なるためです。
ターゲット | おすすめの販売方法 | 例 |
---|---|---|
既存の読者層 | 自社販売 |
|
新たな読者層 | 大手プラットフォーム |
|
既存の読者層向けなら、自社販売がおすすめ
例えば、業界向けの雑誌や専門書籍など、電子書籍化しても読者層が同じ場合は、自社販売がおすすめです。その理由は大きく2つあります。
「販売手数料」を抑えられる
販売手数料とは、電子書籍が購入される度に決済会社へ支払う手数料です。
販売価格に対する割合(%)で示されます。
大手プラットフォームの場合、販売手数料の相場は30~65%です。
例えば、1000円の書籍の場合、300円~650円が手数料の相場となります。
自社販売の相場は4~10%程度です。1000円の書籍の場合、40円~100円が手数料の相場となります。
大手プラットフォームと比較し、手数料は約1/5~1/10に抑えられます。
販売手数料は売上に比例し、利益を常に押し下げるため、販売手数料はなるべく低く抑えておくべきです。
既存の読者であれば、書籍や出版社を知っています。そのため、大手プラットフォームの知名度を利用する必要性は低いでしょう。高い販売手数料を払うのであれば、自社販売(少ない販売手数料)で既存の読者層から確実に収益を上げた方が得策です。
自社販売のコスト、ハードルの低下
「自社専用のECサイトなんてどうやって作ればいいんだ……」と悩む方もいるかもしれません。
ですが、最近は電子書籍の販売サイトを作るハードルがグッと下がってきています。
- 電子書籍に特化したECサイトを開発してくれる企業だけでなく
- 開発不要で電子書籍を販売できるシステムもあります。
多少コストをかけても良いから、ECサイトの見た目や機能にこだわりたい方はaが良いでしょう。
コストをかけずにスモールスタートで始めたい、まずは電子書籍を売りたい、という方はbがおすすめです。
aやbの具体的な例は、「【第3回】電子書籍の販売方法~独自販売編」で解説します。
新たな読者層向けなら、
大手プラットフォームの利用がおすすめ
例えば大衆向けの書籍(小説や漫画など)は潜在的な読者層が広いため、電子書籍も販売することで、これまで紙ではリーチできなかった読者層に購入してもらえる可能性が広がります。
このような場合は、Kindleストア(Amazon)等の大手プラットフォームを使うのがおすすめです。
大手プラットフォームは、普段使いされるため、
- 他の商品を買おうとした時の検索結果
- ランキング
- おすすめ商品
等のページで、新たな読者層に知ってもらえる可能性があります。
大手プラットフォームにはどのようなものがあるのかについては、別記事「【第2回】電子書籍の販売方法~大手プラットフォーム編」で解説します。
POINT02
どのような料金体系にするか
買い切り or サブスクリプション
PAYMENT
電子書籍の料金体系は、今や1冊ごとの値段設定(買い切り)だけではありません。
定額制読み放題(サブスクリプション)の売り方をする出版社も出てきています。
それぞれに向き不向きがありますので、検討すると良いでしょう。
料金体系 | 向いているケース | 例 |
---|---|---|
買い切り |
|
(大手) Kindleストア(Amazon) (独自) 技術評論社 |
サブスクリプション |
|
(大手) Kindle Unlimited(Amazon) (独自) 女性モード社 |
特定分野向けならサブスクリプションがおすすめ
サブスクリプションが向いている例としては
- 雑誌
- 専門書籍
があります。
いずれも読者が「その分野に興味・関心があり」「書籍を辞書(知識のデータベース)のように利用」する傾向にあります。そのため、読者は沢山の書籍から情報を探すように読みたいものです。
しかし、すべてを一度に買うことは現実的ではありません。
その場合、サブスクリプションで読み放題になるというのは、毎月や毎年の支払いが可能な範囲で沢山の書籍へアクセスできることは読者に大きなメリット(ニーズ)があると考えられます。
また電子書籍には全文検索という大きな武器があります。特に読み放題の書籍を横断して検索できる販売システムがあれば、読者にはなお一層のニーズがあるでしょう。
一方、出版社としてもサブスクリプションによる継続的な売上は、長い目で見れば沢山の書籍を購入していただいたのと同じ効果を見込めます。
POINT03
電子書籍をどう制作するか?
内製 or 外注
METHOD
紙の書籍出版とは異なり、電子書籍は内製が可能です。外注が当たり前と思っていた場合でも、内製でコストを抑えられるケースがあります。検討しておきましょう。
企業の場合、多くは紙の書籍を電子化するため、元となる印刷データ(DTPやPDFファイル)があります。
つまり、そのデータを電子書籍に変換する作業が容易であれば、内製によってコストが下げられます。
そして、この変換の難易度は
- 電子書籍の種類(EPUB, デジタルブック)
- 電子書籍に全文検索等の機能をつけたいか
によって異なります。
EPUB:全文検索不要、レイアウト固定なら内製可能
内製が可能な場合と難しい場合があります。
以下の場合、内製が可能です。
- 書籍内の全文検索は不要
- ページのレイアウトは書籍と同じままで良い
上記のいずれかがNGの場合、外注が一般的です。
元となる印刷データから全文検索やレイアウトが自動で変わるEPUBを制作するには、DTPソフトウェアやEPUBの専門知識が必要となるためです。印刷会社や電子書籍制作会社に委託することが多く、シンプルなレイアウトの場合、1週間~10日ほどで完成します。
なお、大手プラットフォームで販売する場合は、EPUBで制作する必要が有ります。
デジタルブック:全文検索付き、レイアウト固定で内製可能
内製できます。
PDFをアップロードすれば、すぐに全文検索機能付きの電子書籍に変換されるためです。
デジタルブックは各メーカーの独自規格であるため、メーカーが販売システムを持っていれば販売できます。
なお、一般的にデジタルブックのページレイアウトは書籍と同じ(固定)と同じになります。
詳細は別記事「【第4回】電子書籍の種類とその作り方」で解説します。
POINT04
他のコンテンツも販売するか
動画や音声の販売
APPENDIX
今や電子書籍と関連する動画や音声等をセットで販売する企業が出てきています。
電子書籍の付加価値向上や、競合他社との差別化に繋がりますので、検討しておくと良いでしょう。
ここでは2つの事例を紹介します。
「書籍+動画販売」の例~実践的なノウハウの解説動画で単価UP
- 企業名 女性モード社
- 販売内容 美容系の雑誌+美容師のスタイリング動画の定額制読み放題(サブスクリプション)
- 付加価値 美容師のテクニック、ノウハウが動画で直感的に学べる
詳細
実際にプランに加入してみたところ、動画によって読者(美容師)が「分かる」だけでなく「できるようになる」サービスとなっていました。
雑誌ではスタイリングや美容の種類や知識が素早く分かります。
一方、動画では、スタイリングの方法、手順が現役美容師によって具体的に再現、解説されていました。
読者が現役のプロの場合(美容師)、知識だけでなく現場で使えるノウハウを求めている場合は少なくありません。そのため、この様な解説動画が付くと多少値段が高くても購入の決め手になりそうです。
動画も見放題になるプランは月5,000円ですが、実際にノウハウを教えてもらうセミナーの参加費を考えれば決して高くはありません。
このように、動画のセット販売により単価を上げることも可能です。
「書籍+音声販売」の例~何かしている時も読みたい層に有効
- 企業名 丸善雄松堂
- 販売内容 学術機関向けの書籍・雑誌 + 音声(オーディオブック)のセット販売
- 付加価値 何かをしながらでも書籍の内容を学べる(ながら聞き)
詳細
電子書籍と朗読した音声(オーディオブック)のセット販売により、本を開く必要が無くなり、書籍に触れる機会を更に増やすことができます。
知識や資格系の書籍であれば、繰り返し聞くことで、習熟度が向上する、といった付加価値を提供出来るでしょう。
また、読者層が本を読む時間が取りにくい場合は、通勤時間等のスキマ時間にも読み進められるといった付加価値を提供できます。
電子書籍と動画やオーディオブック等を同時に販売する方法については、別記事「【第5回】電子書籍、オーディオブック、動画をまとめて販売する方法」で紹介します。
電子書籍のみで良い場合の販売方法については、以下の別記事で紹介します。
「【第2回】電子書籍の販売方法~大手プラットフォーム編」
「【第3回】電子書籍の販売方法~独自販売編」
まとめ
電子書籍は紙の書籍とは異なり、さまざまな販売方法や制作方法があります。
それぞれに向き不向きがありますので、今回紹介したポイントを意識して検討を進めると良いでしょう。
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